生活保護法に基づく葬祭扶助を利用して執り行われる葬儀は、一般的に「福祉葬」や「民生葬」と呼ばれます。この葬儀は、故人の尊厳を守りつつ、税金で賄われる公的扶助であるため、その内容は「最低限度の葬送」に限定されています。具体的にどのようなことができて、何ができないのかを正確に理解しておくことが重要です。葬祭扶助で認められるのは、ご遺体を火葬し、ご遺骨を骨壺に納めるまでの一連のプロセスです。具体的には、まずご遺体を病院などから安置場所まで運ぶ「遺体搬送」。そして、火葬までの間、ご遺体を衛生的に保管する「遺体安置」と、そのために必要なドライアイスなどの費用。ご遺体を納めるための「棺」。火葬場で火葬を行うための「火葬料」。そして、ご遺骨を納めるための「骨壺・骨箱」。これらが、葬祭扶助の範囲内で提供される基本的な内容です。この形式は、通夜や告別式といった儀式を行わない「直葬(火葬式)」とほぼ同じものになります。したがって、一般的な葬儀で行われるような宗教的な儀式は、原則として扶助の対象外です。例えば、お坊さんを呼んで読経をしてもらったり、戒名を授かったりする場合、その費用(お布施)は自己負担となります。また、故人を偲ぶための祭壇を飾る費用、会葬者へのお礼である返礼品、通夜振る舞いや精進落としといった飲食にかかる費用も、扶助の対象には含まれません。あくまで、社会的な儀礼や宗教的な要素を排し、故人を衛生的に火葬するという、葬送の最も核となる部分を公的に支援するのが、この制度の趣旨なのです。華やかさはありませんが、故人の尊厳を守り、きちんと最後の見送りをするための必要不可欠な要素は、この制度によって確かに保障されています。